【昔のSFマンガ】夢の中の夢物語「ダークグリーン」 ― 1980年代に、既に現代のネットに似た世界を描いていた
インターネットがもたらした新たな世界観は、映画「マトリックス」の様な仮想現実などがあります。
しかし、実は日本では、まだインターネットが普及する前の1980年代に、そんな世界を予感させるマンガが発表されていました。
インターネットと唯一違うのが、その世界は電子空間ではなく、眠っている時に見る「夢の世界」
それが、今回ご紹介するマンガ「ダークグリーン」です。
あらすじ
198□年12月20日、世界中の人々が同じ「夢」を見た…
まるで別世界の様にあらわれた「夢」を、人々は「Rドリーム」と呼ぶようになる。
そこはまさに「夢の世界」、自分の思った事が現実になり、不意に非現実的な光景があらわれたり、世界中の人々が言葉の壁を越えて会話が可能になる世界。
だが、その「Rドリーム」の事を覚えている人と覚えていない人とがいる。
そして、その「Rドリーム」では「ゼル」と呼ばれる侵略者が出現し、全人類は「Rドリーム」の中で「ゼル」と戦う事となる。
「Rドリーム 」での戦いで死ぬと、現実世界では植物人間となり、現実世界でも「死ぬ」事になる。
また、「Rドリーム」から覚める事が出来なくなった者も同様に植物人間となってしまう。
「西荻北斗(にしおぎ ほくと)」は、そんな「Rドリーム」で、「戦士ホクト」となって「ゼル」と戦いを繰り広げていた。
最初は「Rドリーム」内での記憶が無かった「西荻北斗」だが、ある事をきっかけに「Rドリーム」内でも現実世界での「西荻北斗」としての意識を保てるようになる。
彼は、「Rドリーム」内で最強の戦士である少年「リュオン」と行動を共にしており、後には金色の肌を持つ弓使いの少女「ミュロウ」とも知り合い「ゼル」と戦う事となる。
「リュオン」も「ミュロウ」も、現実世界での自分を忘れており、現実世界での自分を探す為に「Rドリーム」の深部へと向かってゆく。
登場人物
1.西荻北斗(にしおぎ ほくと)
本作品の主人公、「Rドリーム」内では「ホクト」と呼ばれている。
現実世界では、美術大学入学を目指し浪人している20歳の男性。
親の仕送りで暮らす貧乏浪人生。
だが「Rドリーム」では、「戦士ホクト」として、Rドリーム内の戦士として強い部類に入る。
しかし、「Rドリーム」でも現実世界の「西荻北斗」の意識を引き継いだ時に、「戦士ホクト」として戦っていた以前の記憶を無くしてしまう。
2.リュオン
Rドリーム内では知らない者が居ない最強の少年戦士。
年頃は中学生ぐらいで、銀色の髪を持つ。
現実世界に戻る事が出来ず、更には現実世界の記憶も持っていない。
「ホクト」を慕って常に行動を共にしている。
3.ミュロウ
金髪で金色の肌をしているポニーテールの少女。
言葉遣いは男の子で、立ち振る舞いも少年の様である。
弓を使い、その強さは「ホクト」と同等でもある。
「ホクト」の事が好き。
考察
作者は「佐々木淳子」というSFを主に手掛ける女性漫画家です。
女性らしく繊細なタッチで描かれる画風は少女マンガですが、内容はかなり硬派なSFで、繊細な画風に似合わない衝撃的な死亡シーンなども描きます。
物語に登場する「Rドリーム」は、いま世界全土に張り巡らされたインターネットとよく似ています。
しかし、作品の発表は1983年から1988年であり、日本ではインターネットが普及する以前の作品です。
物語は、非現実的な世界や行動など、「夢の世界」である事を上手に利用した表現があります。
その描写は映画「マトリックス」に通じるものがあるといえるでしょう。
そして、「Rドリーム」という存在自体も非常に良くできた多層世界であり、その存在自体がこのマンガでは非常に大きな意味を持ちます。
物語は冒頭から中盤までは「Rドリーム」が主体になります。
そして後半は、現実世界と「Rドリーム」がリンクをし始め、非常に練り込まれた設定に読者は驚くことでしょう。
本作品「ダークグリーン」は、完結済みの作品です。
少し古い作品ですが、読み物として十分現在でも通用する作品です。
ちなみに続編も存在し、続編は商業誌で発表されていますが、続々編は非商業誌の同人誌での発表となっています。