栃木県「大谷資料館」―地下を占拠する神秘的な巨大ダンジョン
迷宮?地下都市?
Writer’s Photo, Top: flickr.com
ゲームのダンジョンや映画のワンシーンを思い起こさせるこの神秘的な場所の名は、栃木県宇都宮市大谷町にある大谷資料館(おおやしりょうかん)である。この場所の正体は、1919年から1986年にかけて運営されていた、地下採石場の坑道跡。広さは2万平方メートル、広大な空間全てが石を切り出した結果の産物なのだ。
この巨大な地下空間は、戦時中は倉庫・工場として、また戦後は米の貯蔵庫として使われたが、現在では一般向けに公開されているため、地下に降りて見学することは勿論のこと、ミュージックビデオの撮影や展覧会、更にはコンサートなど、幅広い用途に使われるようになっている。
さあ迷宮内部へ!
いよいよ坑道へ行くための階段を降りていくと、明らかに気温が下がっていくのを感じる。坑道内はまさに天然の冷蔵庫で、年平均気温はなんと8℃だという(大谷資料館のホームページにその日の坑道内の気温が表示されている)。凍えないために、たとえ真夏でも必ず上着を持って行くようにすること。
ちなみに、一階部分は受付兼資料室となっており、採掘の歴史的資料を見ることができる。
光の芸術 × 採掘遺跡
地下は、いたるところに様々な色のライトアップとBGMによる演出が施され、よりいっそう神秘的な世界が広がっている。ところどころ岩の隙間から地上の光が差し込む地点もあり、それにより、地下にいるのだと改めて実感させられる。また、採掘の歴史を窺い知ることができる採掘道具と共に、数々のオブジェが置かれている。
写真に映っているのは普段は非公開の「プリエール教会」というエリアで、申し込めばこの場所で結婚式を執り行うことができる。
古墳にも使用されていた「大谷石」
大谷資料館付近は切り立った崖が多く、険しくも美しい景色が連なる(写真は2月撮影のため雪が残っている)。
大谷町周辺には大谷石が広範囲に渡って大量に埋蔵されている。大谷石は、軽量で柔らかいため加工がしやすく、更には耐火性・耐震性・防湿性に富む点から、建築や土木に適しているとされ、古くから採掘・利用されてきた。このあたりによく見られる不自然に角ばった岩肌は、石を切り出した痕跡である。
最も古い例としては、6、7世紀の古墳に大谷石が使用されていたとされる事例が挙げられる。もちろん現在でも建築物や石釜の材料としてしばしば使われる。
施設詳細
-入場可能時間:9時~17時(最終入場時刻は16時半まで)
-入場料:大人700円、子供350円
-アクセス:JR宇都宮駅から大谷・立岩行きのバス(6番乗り場発)で約30分/東武宇都宮駅から大谷・立岩行きのバスで約20分。いずれも「資料館入口」で下車をし、そこから更に10分歩く。
バスの本数はそれほど多くなく、交通の面で少々不便だが、たったの700円で非日常を体験できると考えれば、とるに足らないことだ。栃木県宇都宮市を訪れた際には、是非とも足を伸ばしてほしいスポットである。