藤三旅館 ― 600年間大切に守られ続けてきた、東北の名湯「鉛温泉」
岩手県花巻市の奥羽山脈の中腹にある鉛温泉は、「新日本百名湯」にも選ばれた温泉です。鉛温泉には一軒の温泉宿があり、日帰り入浴又は宿泊で温泉を楽しむことができます。
豊沢川沿いに建つ「藤三旅館」 (Writer’s Photo)
藤三旅館は鉛温泉唯一の宿。600年ほど前、祖先が高倉山麓で木こりをしているときに、岩窟から出てきた一匹の白猿が、木の根本から湧き出る泉で手足の傷を癒しているのを見て、温泉の湧出を知り、仮小屋を建てて天然風呂としたと言い伝えられています。その後、長屋を建て温泉旅館として大衆のための浴場となりました。現在は、館内に4つの浴場があり、全て源泉100%掛流しです。
アクセス
鉛温泉・藤三旅館は、岩手県花巻市にあり、新幹線新花巻駅とJR花巻駅から、以下の時間に無料シャトルバスが出ています。
<花巻南温泉郷 無料シャトルバス>
– お迎え –
新花巻駅発 15:10, 16:10, 17:10
花巻駅発 15:25, 16:25, 17:25
– お送り –
藤三旅館発 9:47
新花巻駅↔藤三旅館間は、約60分です。
車で訪れる場合は、JR花巻駅より19㎞、いわて花巻空港より27㎞、県道12号線沿いのこの看板が目印です。
温泉
鉛温泉は、日帰り入浴が可能です。営業時間内は、湯上がり処、寛ぎ処、中広間、ロビーの無料休憩所を利用できます。また、お食事処では、日帰り入浴の方も利用できるメニューを提供しています。
日帰り入浴営業時間:7:00~21:00 (受付は20:00まで)
料金:大人700円、子供500円
玄関を上がり、料金を支払ったら、正面に4つの湯の案内板があります。それぞれに男女別の利用時間があるので、確認してどのお湯から入浴するか決めましょう。
1. 白猿の湯
白猿の湯は藤三旅館の自慢のお風呂です。天然の岩をくりぬいて作った浴槽の底からは、透きとおった源泉が涌き出ています。風呂の深さは、約1.25mあり、立って入浴する珍しい温泉です。立位浴は満遍なく全身に湯圧がかかり、循環器系を整えたり、血行促進にも効果があると言われています。こちらの湯は、入浴を楽しむのみで、浴場で石鹸やシャンプーなどの使用はできません。基本的には男女混浴ですが、以下の時間は女性専用となります。
女性専用の時間:6:00~7:00, 14:00~15:00, 19:30~21:00
*金曜10:00~14:00は清掃のため利用不可
2. 白糸の湯
窓の向こうに見える白糸の滝 (Writer’s Photo)
大きな窓を全開にすると、豊沢川と白糸の滝を望める展望半露天風呂です。浴槽には浅い部分もあり半身浴を楽しむこともできます。男女それぞれの入浴可能時間が決められているので、下の入浴時間を確認してください。
入浴時間:男性 15:00~6:00、女性 6:00~15:00
3. 桂の湯
桂の湯は、男女それぞれに浴場があるので、営業時間内はいつでも利用可能。内風呂と露天風呂からなり、露天風呂のすぐ横を豊沢川が流れています。桂の湯には、ボディーソープやシャンプーなどが設置されています。
まずは体を洗い洗髪して、風呂を楽しみ、一息ついたら廊下をはさんで入口が向かえにある白猿の湯に行くとよいでしょう。桂の湯の清潔な脱衣室には、各種アメニティーも揃っています。
4. 銀の湯
こちらは段差が少なく、床暖房を完備した、バリアフリーに配慮した浴場です。貸し切り利用も可能なので、ご家族や仲間たちと利用することもできます。貸し切り可能な時間、男女それぞれの入浴可能時間は以下の通りです。
貸し切り可能時間:15:00~21:00(先着順で50分間)
男性専用:6:00~15:00
女性専用:21:00~6:00
宿泊
全ての湯をゆっくりと楽しみたい方には、宿泊もお勧めです。藤三旅館には「本館」、「別館」、「湯治部」の3つの宿泊施設があります。本館は歴史ある総ケヤキ造りの純和風、別館は現代建築の和風モダン、湯治部は田舎のおばあちゃんの家のような木造建物です。今回は、3つの宿泊施設の中から最もリーズナブルな価格で宿泊できる湯治部をご紹介します。
湯治部宿泊者が使用できる広い共同キッチン (Writer’s Photo)
今回(2016年6月)筆者が利用したお得プランは、1泊2食付きで3924円でした。お部屋はアウトバスアウトトイレですが、朝のチェックアウトまでに4つのお湯全てをゆっくり楽しむことができました。鉛温泉周辺にはコンビニエンスストアなどのお店はありませんので覚えておいて下さい。湯治部1Fに、日用品や飲物、お土産物などを販売する売店はあります。
東北の静かな山道を進むと、そこには数百年の間大切に守られてきた温泉宿がありました。春は新緑に囲まれて、夏は川音で涼み、秋には紅葉、冬には雪景色を目で楽しみながら、「新日本百名湯」の自慢の湯と共にゆっくり癒されるひとときを過ごしてみるのもよいでしょう。