「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」(萩原一至) ― ファンタジーマンガのパイオニア的存在
1980年代ごろは、SFマンガが主流のジャンルだった日本のマンガですが、現在は、ファンタジーを主題にした作品が多く見られます。今の様な、ファンタジーが主流になった原因となる作品は、「ロードスト島戦記」などがあります。今回は、そんなファンタジー作品のひとつである「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」をご紹介しましょう。
あらすじ
世界を二分した大戦で、その戦いを仕掛け敗北した大魔法使い「ダーク・シュナイダー」。
一度死んだ彼は、「転生の術」で「ルーシェ・レンレン」として「ティア・ノート・ヨーコ」と暮らしていた。
そんな二人が暮らすメタ=リカーナ王国に、闇の軍団が侵攻し、ヨーコによって封印を解かれたダーク・シュナイダーが復活する事から始まります。
物語は幾つかの章節にわかれており、破壊神アンスラサクス復活をたくらむ四天王との戦いを描いた「闇の反逆軍団編」。
四天王最後の一人、氷の魔法使いカル=スとの激闘と破壊神アンスラサクスとの最終決戦を描く「地獄の鎮魂歌編」。
世界の終末を告げに降臨した天使達から世界を守る為の戦い”ハルマゲドン”である「罪と罰編」。
「罪と罰編」以降の荒廃した世界で、世界支配をもくろむ悪魔達や天使との戦いを描いた「背徳の掟編」。
最初の第1作目の発表1988年から2016年現在も連載中。
登場人物
1.ダーク・シュナイダー
主人公であり、略称は「D・S」(以下、D・S)。
火炎を用いた魔法を得意とする。
性格はワガママで自分勝手、元々は世界を支配しようと大戦を仕掛けた張本人。
大戦で敗けた時、ルーシェ・レンレンに転生したが、ヨーコの父親によって封印されていた。
2.ルーシェ・レンレン
D・Sの転生した姿。
彼とは真逆な天真爛漫で少し間の抜けた少年。
3.ティア・ノート・ヨーコ
メタ=リカーナの大神官の娘で、物語最初は巫女見習い。
ルーシェとは姉弟のごとく一緒に育ち、その影響からかD・Sは彼女には逆らえない。
4.カル=ス
かつてD・Sに仕えた四天王のひとり、冷却系の魔法を使う氷の魔術師。
魔法同様、冷静沈着で感情の起伏が少ない。
現在は世界の覇権を目指し、破壊神アンスラサクスの復活をもくろむ。
5.アーシェス・ネイ
四天王のひとり、黒い肌をしたダークエルフ。
雷撃系の魔法を使う魔法剣士。
6.ニンジャマスター・ガラ
四天王のひとり、隠密・暗殺行動を主とする忍者軍団を率いる。
7.アビゲイル
四天王のひとりであり、ゾンビなどを使役するネクロマンサー。
考察
本作品は当初、少年向けのマンガ雑誌「少年ジャンプ」に連載され、大人気となりました。
その魅力のひとつは、作者:萩原一至の圧倒的な画力で描いた「破壊」の描写です。魔法使いダーク・シュナイダーの魔法によって巻き起こされる爆炎と激しい破壊の描写は今までのマンガには無い表現でした。
また、本作品の世界背景は「指輪物語」などのファンタジーの様式に則した作品です。設定の多くは、テーブルロールプレイングゲーム「D&D」に従っており、版権を侵害して単行本ではモンスターの姿と名称を変更している程です。
こうした、ファンタジー作品の様式を踏まえる事で、作品に重厚なリアリティを与える事に成功しています。
現在の進捗
日本では、単行本は27巻(2015年12月現在)が刊行されています。現在も連載中ですが、作者の体調不良などにより不定期連載となっています。「未完で終わるマンガ」として「ハンター×ハンター」(作者:冨樫 義博)「ベルセルク」(作者:三浦 建太郎)と共に完結まで到達出来るか心配されている作品でもあります。
まとめ
最初に説明した様に、ファンタジーを日本に広めた作品のひとつと位置づけて良いでしょう。多くの日本の少年達は本作品で正統派ファンタジーを知り、その魅力に引き込まれました。気の荒い魔法使いが主役の作品も珍しいと思います。機会があれば、ぜひ一読される事をお勧めします。