食べてみんね!長崎の郷土料理「長崎ちゃんぽんと皿うどん」
長崎のご当地グルメ「ちゃんぽんと皿うどん」。「ちゃんぽんと皿うどん」は長崎発祥で、全国的にもその名は知られ、誕生からすでに100年以上の歴史がある「ちゃんぽん」に続き、ちゃんぽんの弟分である「皿うどん」も長崎の人々に愛される地元グルメとして定着している。 写真: ja.wikipedia.org
長崎ってどんな街?
長崎とは九州に位置する地方都市のひとつである。第二次世界大戦中、広島に続き原爆を投下された最後の被爆地として世界中にその名を知られているが、その昔かつての政策のため鎖国中であった日本において、数少ない海外との貿易港として栄えていた歴史を残す街でもある。
当時は、中国及びオランダとの間にのみ通商関係があったため、多くの中国人やオランダ人が長崎に居留していた。そのため長崎の文化には、中国やオランダをはじめとした中国・西洋・日本文化が混じり合い、他の地域では見られない独特の文化が発展している。これらは長崎の食文化に大きな影響を与えている要素の1つだ。
現在も国の重要文化財に指定されている当時の洋風建築や、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」(全23資産)の構成資産である旧グラバー住宅と呼ばれる洋風建築、長崎に創建された3つの唐寺、長崎の中華街があることから、かつての名残を感じることができる。
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ちゃんぽん生みの親「陳平順」とは?
ちゃんぽんの生みの親である陳平順は、1892年に中国の福建省福州から、長崎で一旗揚げる事を夢見て長崎の地を踏んだ若者であった。その後、時代の波にのまれ風当りの強い情勢の中、努力を重ね、その甲斐あって1899年に長崎市内に中華菜館兼旅館の「四海樓」を創業する。
その後、陳平順は元来の面倒見の良い性格と長崎に来たばかりの頃に苦労した経験もあった為、中国から長崎へ渡航してきた多くの華僑や留学生の身元引受人になっていたという。このことからも、生前の陳平順の心温かい人柄がうかがえる。
ちゃんぽん誕生の歴史
ちゃんぽんはそんな1900年代にさしかかっていた当時、お腹を空かせ栄養状態の悪かった中国からの留学生のために、安くて栄養価が高く、お腹がいっぱいになる食事を提供したいという、陳平順の気持ちから生まれた料理だ。
ちゃんぽんの評判は瞬く間に留学生の間に広まり、彼らの栄養面の手助けをしただけでなく、長崎の中華街にもどんどん広まっていった。
ちゃんぽんの人気が高まり、長崎の中華街の多くの店でも提供されるようになったある日、陳平順は娘にちゃんぽんの商標登録をするように勧められたが、「留学生や長崎人にかかわらず大勢の人に食べてもらえたら満足だ」と言い、それは実現されなかった。現在も日本各地だけでなく、海外でもちゃんぽんが自由に提供されるのは、陳平順のちゃんぽんへの深い思いがあったからだとも言えるだろう。
また、当時の長崎では、1年を通して安定した食材の確保が難しかったが、長崎近海で捕れる海産物や蒲鉾、竹輪といった練り物、もやしやキャベツといった野菜を使用し、そしてそこに季節の食材を入れることで、ちゃんぽんは四季折々の味が楽しめる具材たっぷりの長崎郷土料理として発展していく。
ちゃんぽんの麺は、小麦粉に唐灰汁(とうあく)を加えることにより、うどんとは違った独特の風味を感じる事ができる。熱く熱した鍋で先に具材を炒め、豚ベースまたは鶏ガラベースのスープで味を整え、ちゃんぽんの麺を一緒に煮込む。それによって麺により味が染み込み、ちゃんぽんの深い味わいが楽しめるのだ。
今では長崎市内の中華料理店を含む多くの飲食店でちゃんぽんは提供されており、お店によってこってりしたスープやあっさりしたスープをはじめ、最近ではカレー味やみそ味といった一味違うちゃんぽんも食べることができる。
皿うどん誕生の裏話
皿うどんは、「四海樓」の陳平順が、スープを少なくしたお皿に盛ったちゃんぽんを出前用にアレンジしたことがはじまりである。そのため、当時の皿うどんの具材は、スープの量以外はちゃんぽんとほぼ同じだったが、見た目が皿にのったうどんのようだったことから皿うどんと呼ばれるようになった。
その後、堅焼きそばが長崎に伝わり、油で揚げた細い麺の上にちゃんぽんに似た具材をあんかけにした食べ方が発展し、こちらも皿うどんと呼ばれるようになった。現在では、長崎の飲食店で皿うどんを注文すると細麺が出てくることが多いことから、細麺の皿うどんの方が知名度が高く、地元長崎でも細麺を好んで食べる人の方が多い。
また、あんのかかった皿うどんにウスターソースをかけて食べるのが長崎風。何かの行事で親戚や仲間が集まった時に大皿で皿うどんを注文し、小皿に分けながら食べる家庭もあることから、長崎のソウルフードのひとつとして数えられている。
長崎を訪れた観光客が絶対に食べたいと思う長崎の郷土料理、ちゃんぽんと皿うどん。いざ注文になると、どちらを食べるか非常に悩むだろうが、ぜひとも欲張って両方味わってみて欲しい。その味わいに、きっと甲乙つけ難くなるはずだ。
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