音がなくても1つの音楽として表現してしまう「日本の音楽マンガ」5選
日本のマンガには多彩な表現方法がありますが、未だに完全に表現ができていない分野があります。それは「音」です。日本のマンガ家達は、そんな表現できないものにも、現在進行形で挑戦し続けています。今回は「音楽」をテーマにした作品を5つご紹介します。それらの作品は、マンガでありながら、あなたの耳に「音楽」を届けることでしょう。
のだめカンタービレ
by 二宮知子
自分も指揮者になりたいと想いながらも、指揮者である親の七光りと思われるのが嫌で、指揮者の勉強をする事ができない青年「千秋 真一」。そんな彼が、音楽大学で出会った女性「 野田 恵(通称:のだめ)」は、優れたピアノの才能を持つ変人。そして「千秋 真一」は指揮者、「野田 恵」はピアニストの道を歩み出す姿を描いたコメディ。
主題は「クラッシック」で、日本ではドラマ、実写映画化が大ヒットになりました。音楽描写は、オーケストラでの指揮や奏でるピアノ曲を心理描写や相手が受け取ったイメージで描いています。日本人にクラッシックを親しみやすくした作品です。
BLUE GIANT
by 石塚真一
物語の始まりは「仙台」。「宮本 大」はジャズに魅了され、楽譜も技巧も知らずにサックスを吹き始めます。雨の日も雪の日も毎日、河川敷で奏でる彼のジャズは、人々を徐々に魅了してゆきます。彼のジャズに対する熱意と音色で変わる人々との交流や人生模様が描かれます。
単行本の1冊目では、主人公が楽譜の知識もサックスの吹き方も知らないままに熱中する姿と、ごく普通の日常生活が丹念に描かれます。その丁寧さは「宮本 大」の人生を描いた「ドキュメンタリー」と言っても良い程です。サックスの重厚な音色を、硬く太い線や刻み込んだ様な独特のタッチでジャズの音色を表現しています。
ピアノの森
by 一色まこと
有名なピアニストとして活躍していた「阿字野 壮介」は交通事故によって引退し、音楽教師として空虚な生活をしていました。そんな彼がスラム街の外れにある深い森の中で、かつて彼が捨てたピアノを弾いて遊ぶ「一ノ瀬 海」と出会います。二人の出会いから、新たにピアノと向き合う生活が始まります。
主人公「一ノ瀬 海」は天才的なピアニストであり、その感性と技巧は、作品の中でほぼ絶対的優位に描かれています。そんな主人公を追いかけるライバル達の目を通して物語は進行してゆきます。本作品での音楽表現は、音楽を聴いた人が心に思った「独白」と、ピアニスト独特の動きを描く事で表現しています。
SHIORI EXPERIENCE ~ジミなわたしとヘンなおじさん~
by 長田悠幸、町田一八
「本田 紫織」は、地味な英語教師。そんな彼女が「ロックの悪魔」に憑り付かれ、「27歳までに「伝説」を創らないと死ぬ」と宣告されます。その悪魔は、伝説的なロッカー「ジミ・ヘンドリックス」。そして、紫織は伝説を生むために「創作の地獄」へ落ちる事になるのです。
主題は「ロック」。
ストーリーはコメディですが、「物を造り出す苦しみ」と「物を造り出す事の楽しさ」がしっかりと描かれています。作品の音楽表現は「爆発!!」。ギターを弾くと聴衆や物が激しく爆発、破壊され、ロックの激しさを表現しています。
ましろのおと
by 羅川真里茂
「澤村 雪」は幼い頃から津軽三味線の奏者である祖父が奏でる演奏を聴いて育った。祖父から三味線の技巧を受け継いだ彼は、祖父の死後に、自分の奏でたい音、人に聴かせたい音を探す為に東京へ上京する。
作品に登場する日本独自の弦楽器「三味線」は、ギターと同じ部類の楽器です。実際の奏者としては、「吉田兄弟(Yoshida Brothers)」が有名でしょう。そうした伝統的な日本の楽器と奏法を受け継ぎ伝える人たちの姿が描かれています。
音楽表現は、珍しく奏でる「擬音」を使用しています。これは三味線がアクセントとして大きく弦を弾いたり、胴を叩いて奏でる動作がある為です。
「音楽」を主題とした作品は、映画やドラマでは数多くあります。しかし、音が鳴らない絵の中でダイナミックな描写を用いて「音楽を読ませる」のは、日本のマンガだけかもしれません。もし手に取る機会があれば、ぜひ一読してみてください。