日本伝統の「和色パターン」 ― 歌舞伎の幕の3色+伝統幕の意味
これは歌舞伎の開閉時に使用される幕、「定式幕(じょうしきまく)」です。構成している3色はすべて「和色」で、まさに日本といった感じ。今回は、そんな日本伝統の和色の組み合わせを、歌舞伎の幕を例に解説してみようと思います。タイトル写真:https://www.flickr.com
定式幕とは?
3色で構成される縦縞の幕。主に歌舞伎の幕開きと終幕に使われる。演目毎の間や同演目内での場面の様変わりには様々なタイプの幕が使用される一方、定式幕は「常に」と言う意味合いがあり、基本的に柄は固定である。
定式幕の歴史と種類
定式幕には主に3つのパターン、中村座、市村座、森田座(江戸三座)がある。この三座は、江戸時代に唯一引幕の使用を江戸幕府より許可されていた芝居小屋。他の芝居小屋は幕引を使う事自体禁じられていたのだ。
1. 中村座
2. 市村座
3. 森田座
現在の歌舞伎劇場のほとんどはこの森田座の定式幕を使用しているが、もし実際に歌舞伎を見に行く機会があれば、どの座の色の組み合わせが用いられているかぜひ意識して見てほしい。歌舞伎がよりおもしろくなるはず。
定式幕配色の和食:永谷園のお茶漬け
日本の老舗企業「永谷園のお茶漬け」は、まさに歌舞伎の定式幕配色をパッケージに採用している。更に、食べる時にも、黒が海苔、柿色があられ、萌葱色がお茶と完全な一致だ。
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おまけ#1:紅白幕
入学式:紅白幕を背景に, http://hibakama.seesaa.net/
歌舞伎の定式幕以外にも、日本にはいくつかの幕や色のパターンが存在する。
まず1つ目は「紅白幕」。紅白幕は、結婚式、入学式、卒業式、成人式などの祝い行事やバーゲンセールなどで用いられる幕で、縁起が良いとされている。赤色をめでたい色とする国は他にも存在するが、日本の場合は、紅白の2色がセットになってはじめてめでたいとされる。これは日本独特の伝統で、珍しい。ちなみに、紅白は「赤」ではなく「紅」だ。
「祝」と刻印された紅白饅頭, http://www.azusado.com/
また、この紅白は他にも様々な場面で登場する。例えば、めでたい席でよく登場する「紅白饅頭」やその横の箱の「リボン(水引き)」も紅白だ。更に、毎年大晦日恒例の「紅白歌合戦」や「運動会のチーム分け」も紅白が使われる。
おまけ#2:鯨幕
2つ目は、紅白幕とは対照的な位置にある「鯨幕(くじらまく)」。黒白配色の鯨幕は、西洋文化と同様に、葬式や通夜など弔事に登場する。鯨が黒と白の体である事から、日本語では鯨幕と表現する。
おまけ#3:浅黄幕
3つ目は、水色よりも濃い青色と白で構成される「浅黄幕(あさぎまく)」。地鎮祭や上棟式などの神事で登場する。勝手に立ち入ったりしてはいけない神聖な場所の印で、神様のいる場所とされている。歴史的には紅白幕や鯨幕よりも一番古いとされている。
まとめ:和色の効果
着物、和傘など、日本伝統のアイテムには和色が用いられており、原色よりも落ち着いた印象で見る人に安心感を与える。日本っぽいなあと感じるものはおそらくほとんどが和色なはずです。
しかし逆に、和式はその組み合わせによって、他の色を打ち消さずに原色やネオンカラーよりもインパクトを与えられる効果があります。今回の定式幕がまさにそうです。3色が並ぶことによって、忘れられない印象を与えています。日本の伝統を表現するのに一役かっているのです。
今回ご紹介した定式幕の和色はどう感じましたか?日本は世界でも、様々なことに深い意味が込められている国だと言われます。和色についても、ぜひその良さや意味、背景、効果を覚えておいて下さい。日々の何気ない・ありきたりになってしまっていることが、新鮮に感じられ、新たな発見があることでしょう。
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